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「宿題、やったの?」
そう声をかけた瞬間、空気がピリッと変わる。
 
返事をしない。視線を合わせない。
ゲームの画面だけを見つめる。
 
小学3年の男の子。
決して荒れているわけでもない。
学校で問題を起こしているわけでもない。
 
ただ、宿題をやらない。
 
プリントはどんどん、たまっていく。
個人懇談で先生に注意されて、ママは胸の奥がギュッと苦しくなる。
 
「ちゃんと授業、聞いてるの?」
「どうして分からないの?」
「先生、こういってたよ」
 
そんな言葉が、喉元まで出かかって、同時に別の声も聞こえてくる。
 
怒りたくない。
本当は、こんな言い方、したくない。
 
それでも、イライラは止まらず、つい激しくぶつけてしまう。
  

ママは、なぜこんなに不安になるのか

宿題をやらないこと自体が、本当の問題ではない。
 
ママの胸を締めつけるのは、
このままで大丈夫なんだろうか、
勉強についていけなくなったらどうしよう、
ちゃんと育てられていないんじゃないか、そんな不安。
 
そして、もう一つ。
とても言葉にしにくいけれど、確かにあるものは
「ママ自身が、安心したい」という気持ち。
 

宿題をやる姿を見ると、「ちゃんとしている」と思える。
プリントの問題が全部埋まっていると、「大丈夫」と思える。
 
それは世間体でもあり、学校への体裁でもあり、
「私はちゃんとやっている母親だ」という確認でもある。
 
でも、その「安心」は、子どもの気持ちとは別の場所にある。
  

子どもは、なぜ宿題をやらないのか

多くのママが、こう思っているかもしれない。
「やらなきゃいけないって、分かってるはずでしょ?」
 
でも、実は…。子どもは、分かっていない。
 

なぜ宿題をやらなければいけないのか。
何のためにやるのか。
やらないと、どうなるのか。
 
それを、子ども自身の言葉で理解できていない。
もっと言うと、ママ自身も、説明できないことが多い。
 
それは、ママがダメだからではなく、
私たち大人もまた
「なぜそれをやってきたのか」を考える余裕がなかったから。
 

「決まりだから」「先生に言われるから」「みんなやってるから」
 
どれも間違いではないけれど、子どもの心を動かす理由にはならない。
 
理由が分からないまま、子どもは「やれ」と言われる。
 
分からない。できない。
でも、できない自分を見せるのが怖い。
 
その結果、子どもの頭の中は、どんどん絡まっていく。
  

「困っている」と言えない理由

本当は、子どもは困っている。

  • どこから手をつけていいか分からない
  • 途中で間違えたらどうしよう
  • 分からないって言ったら怒られるかもしれない

でも、それを言葉にできない。
なぜなら、過去にこんな経験をしているから。

  • 途中で遮られた
  • 「そんなことも分からないの?」と言われた
  • 否定された
  • 怒られた

だから、心のどこかで思っている。
 
「どうせ言っても、分かってもらえない」
「言ったら、余計に怒られる」
 
そうして、口を閉ざす。
 
ゲームをしている間だけは、考えなくていい。感じなくていい。
でも、ゲームをやめた瞬間、また不安が押し寄せる。
 
やっていない宿題。責められるかもしれない不安。できない自分への失望。
気持ちは、どんどん沈んでいく。
  

沈んだ気持ちは、行き場を失う

この状態が続くと、次に起きやすいのが、

  • 朝、起きられない
  • 学校に行きたがらない
  • お腹が痛い、頭が痛いと言う

いわゆる「行き渋り」。
 
これは、怠けでも甘えでもない。
気持ちの行き場がなくなったサイン。
 

分からない。できない。助けてほしい。でも、言えない。
だから、体や行動で知らせるしかなくなる。
  

ここから変わるために

では、どうすればいいのか。
 
子どもは、できない子ではなく、「どうしていいのかわからない」状態
なのかもしれない。
 
子どもが困っているのは、本当に「やり方」がわからないから。
「何のためにやるのか」という意味がわからないから。
自分が「できていない」ことに対して、自分を責めてしまっているから。
 
その結果、頭がごちゃごちゃになっている。
 
本当は、それだけなのかもしれない。
  

大切なのは「聞き出す」ことではない

ここで、ママがやりがちなのが、
「何が分からないの?」「どこができないの?」と、答えを求めること。
 
でも、子どもはまだ、自分の気持ちを言葉にできない。
質問がいつのまにか、「尋問」になっている。
 
だから必要なのは、質問ではなく、言葉を置くこと。
 

「やらなきゃいけないけど、どこから手をつけたらいいか、分からなかったのかな」
「分からないって言うと、怒られると思って、怖かったのかな」
「本当は、ずっと困ってたのかな」
 
当たってもいい。外れてもいい。
 
言葉をただ置くことで、子どもの心に少しづつ波紋が広がっていく。
 
もし、心に触れる言葉だったら、ふっと表情が変わる。顔が明るくなる。
 
それが、「分かってもらえた」というサイン。
  

「全部丸」が、安心をつくる

白紙のプリントを前にしても、まずは言ってあげてほしい言葉がある。
 
「そっか。やりたくなかったんだね」 「分からなかったんだね」
「できない自分はダメだって思っちゃったんだね」
 
できていない事実を、責めない。ダメ出ししない。
 
これは甘やかしではない。
「安心」がないと、人は本音が出てこない生き物だから…。
 

安心したとき、初めて、「実はさ…」と、本当の気持ちが顔を出す。
 
「実は、どこから始めたらいいのか、わかんなかった」
「お母さんに嫌われると思って怖かった」
 
こうした本心が、ようやく見えてくる。
  

ママ自身の気持ちも、大切にしていい

もし、子どもにイライラするとしたら、それはママが悪いわけではない。
もしかしたら、ママ自身も、今までずっと

  • 嫌でもやってきた
  • 分からなくても我慢してきた
  • 助けてほしかったのに、言えなかった

そんな経験を抱えているのかもしれない。
 
子どもは、ママのその「未消化の気持ち」に、敏感に反応する。

だからこそ、
まずはママ自身が自分の気持ちを分かってあげることが、
子どもに寄り添える一番の近道になる。
 
「お母さんだってさ。
家事も育児も、やりたくなくなる時があるんだよ。完璧じゃないんだよ。」
 
親も未熟な人間であること、完璧ではないことを伝えることは、
子どもにとって大きな安心感になる。
  

親子で話す時間を大切に

時に時間をつくって、子どもとじっくり話すことが大切。
時間を分け合って、例えば10分づつ、交互に次のルールで話し合うといい。
 
話す側のルール

  • 「私は」を主語にして話す
  • 状況ではなく、自分の気持ちや感情を話す
  • 感情が出てきたら泣いてもいい、時間まで黙っててもいい

聞く側のルール

  • 相手の時間の時は最後まで遮らない
  • 途中で意見やアドバイスをしない
  • 「そっか」「そうなんだね」で受ける
  • 言いたい気持ちが湧き上がったら、自分の番までとっておく

この時間を重ねていくと、
子どももママも、少しずつ自分の気持ちに気づいていく。
 
ママは、子どもの奥にしまわれていた本音に出会い、
子どもは、「わかってもらえた」という安心を感じ始める。
 
これまで多くの親子を見てきて、
この関わりが、親子関係がぐっと変わる
大切なきっかけになる瞬間を、何度も目にしてきた。
 

最後に

宿題をしない子は、ダメな子ではありません。
 
ただ、気持ちを言葉にできなかっただけ。安心できなかっただけ。
 

そこに気づいたとき、親子の関係は、静かに動き始めます。
 
お子さんが宿題をしない。学校に行きたくないと言う。
そうした現象の背景には、「どうしたらいいか、わかんない」という苦しさと、
「でも言えない」「言葉にできない」という葛藤があるのです。
 
それは、決して子どもの「甘え」ではなく、子どもの正直さ。
 
そして、その正直さに親がイライラしてしまうのは、
親自身が自分の「やりたくない」という正直な気持ちを受け入れていないから。
 
親子で一緒に、本音で向き合う。その時間が、親子の関係を大きく変えます。
 
忙しいと思いますが、月に1、2回は、お子さんと、
ゆっくり話す時間を作ってみてください。
 
その時間が、のちに、大人になってから、深いつながりとなり、
お互い信頼しあえる関係を築いていくのです。
 
 

ママたちへ。ここまで読んでくれたあなたへ

日々、本当によくやっています。
 
朝起こして、学校に送り出して、
仕事や家事をこなしながら、
子どもの様子に気を配って、
怒りたくないのに怒ってしまって、
あとから自己嫌悪して。
 
それでも、また向き合おうとしている。
 
子育ては、
想像以上にエネルギーがいります。
 
そして実は、子育てというのは、
自分の中に残っている「未消化な子ども時代の感情」を、
何度も刺激される時間でもあります。
 
イライラする。
苦しくなる。
逃げたくなる。
 
それは、あなたが冷たいからでも、未熟だからでもありません。
 
ちゃんと子どもを思っている証拠です。
 
もし、どうでもよかったら、
そこまで感情は動きません。
  

怒りは、ダメな感情ではありません

子どもに向けて湧いてくる怒りの多くは、
「今ここ」の出来事だけが原因ではありません。

  • 昔、我慢してきたこと
  • 言えなかった気持ち
  • 抑え込んできた不満
  • 誰にも分かってもらえなかった悲しさ

そうした感情が、
子どもの姿をきっかけに、
浮かび上がってくることがあります。
 
だからまずは、
怒りを消そうとしなくていい
 
代わりに、
ママ自身の気持ちを、ママが聞いてあげてほしいのです。
  

小さなワーク:ママの気持ちを〇にする

ほんの5分でいいので、
紙とペンを用意してみてください。
 
誰にも見せません。
きれいに書かなくていい。
 
ただ、今の正直な気持ちを、
そのまま書き出します。

  • 正直、疲れている
  • もう頑張りたくない
  • 私だって分からない
  • ちゃんとやってると思いたい
  • 認めてほしい

どんな言葉でも大丈夫です。
 
そして書いた一つ一つに、
心の中で〇をつけてください。
 

「こんなこと思っちゃダメ」と消さないで、
「そう思ってるんだね」と〇をする。
 
これは、
過去から溜めてきてしまった感情を、
少しずつ外に出す作業です。
 
心のゴミを掃除するようなものだと思ってください。
 
一気に片づけなくていい。
今日は少しでいい。
  

ママが自分を〇にできたとき

不思議なことに、
ママが自分の気持ちを〇にできるようになると、
 
子どもの「できていないところ」も、
少しだけ違って見えてきます。
 
責める言葉が、
問いに変わる。
 
急がせる気持ちが、
待つ余白に変わる。
 
それは、
ママが甘くなったからではありません。
自分に厳しくしすぎなくなったからです。
 
子どもを変えようとしなくていい。
まずは、ママ自身の心を、少し整える。
 
それだけで、
親子の空気は、確実に変わっていくのです。

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