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〜なぜ子供は「もっともっと」が止まらないのか〜

はじめに


「ダメって言ってるのに、どうして言うこと聞いてくれないの?」
「ゲームでも買い物でも、『もっと、もっと』が止まらない…」

小学校3年生のSちゃんのお母さんも、同じ悩みを抱えていました。友達の誕生日プレゼントを買いに行った時も、ゲームセンターでも、決められた金額を超えて「もっとやりたい」「もっと買いたい」と言い続ける娘。注意すると機嫌が悪くなり、車の中で泣き出してしまう…

でも、先日の思春期講座で分かったことがあります。

子どもが「言うこと聞かない」のには、深い理由があったのです。


 

第一子の心に何が起きているのか

妹に邪魔されて、お母さんに怒られる日々

Sちゃんのお母さんは、講座の中でこう振り返りました。
「上の子だけを叱ることが多くて…本当は下の子を注意しなければいけない場面でも、上の子ばかり怒ってしまっていました」
これ、多くの家庭で起きていることではないでしょうか。

  • 妹が邪魔をしてきても、「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」
  • 妹が物を壊しても、「お姉ちゃんがちゃんと見てなかったから」
  • 良かれと思ってやったことも、「余計なことしないで」

第一子は、理不尽な怒られ方をたくさん経験しています。


 

大切な物を壊された悲しみ


Sちゃんの場合、大切にしていた鏡を妹に壊されたという出来事がありました。その時は「悲しかった」で済ませていましたが、カウンセリングで話していると、涙がポロポロと止まらなくなりました。

実は、すごく悲しかったんです。
でも、その気持ちを十分に受け止めてもらえていませんでした。


 

なぜ「もっともっと」が止まらないのか

傷ついた心が「やりたい、やりたい」を生み出す

わたし:
「なぜ『やりたい、やりたい』と言うかというと、心の傷がまだ残っているからなんです。傷をそういうことで癒そうとしているんです」

Sちゃんが600円でゲームをやっても「もっとやりたい」と言うのは、単にわがままではありませんでした。

  • 妹に邪魔された悲しみ
  • 理不尽に怒られた傷
  • 本当は褒めてほしかった気持ち

これらの溜まった感情が、「もっと、もっと」という形で出てきていたのです。


 

言うことを聞きたくない心理


わたし:
「それで、お母さんの言うことを聞きたくないんですよ。」

これは決して反抗や甘えではありません。
心の傷があると、素直になれないのです。

本人もどうしていいか分からない状態。
だから「やだ、やだ、やだ」と言い続けてしまいます。


 

感情が言葉を奪ってしまう現象

「言いたいことが言葉にできない」

Sちゃんのお母さんは言いました。
「娘は言いたいことが言葉にできないんです」

わたし:
「感情が溢れちゃって、あまりにも溜まりすぎて、言いたいことが出てこないのね。何が何だか分からないぐらい悲しいんですよ」

これは多くの第一子が経験していることです。


 

学習への深刻な影響


わたし:
「これが学校の宿題の文章を書くことにつながるってことです。書けないんです」

感情が整理されていないと

  • 自分の気持ちを文章にできない
  • 作文が書けない
  • 将来的には面接で言葉が出なくなる可能性も

感情の問題は、学習面にも大きく影響するのです。


 

自分の気持ちを言葉にすることの重要性


自分の気持ちや思いを言葉にするということは、今後、受験や社会に出てから、とても必要とされるスキルです。

  • 大学入試の面接
  • 就職活動での自己PR
  • 職場でのコミュニケーション
  • 人間関係での意思疎通

これらすべてに、「自分の気持ちを適切に表現する力」が必要になります。
だからこそ、家庭の日常の中で、感情を感じて解放する、気持ちを話せる安全な場をつくるということは、子どもの未来にとても大切なのです。

今、Sちゃんのような状況のお子さんに寄り添うことは、単に「今の問題を解決する」だけではありません。お子さんの将来の人生を豊かにする、とても重要な投資なのです。


 

心を癒すために必要なこと


1. ポロッと言った時に受け止める

子どもがふとした瞬間に「あれ、イヤだったんだよね」と言った時、絶対に否定しないことが大切です。

❌ 「だって、しょうがないじゃない」
❌ 「またそれ?」
❌ 「はい、はい、はい」(忙しそうに)

ではなく

⭕ 「そうだったんだね」
⭕ 「辛かったね」
⭕ しっかりと最後まで聞く

と寄り添う。
 
2. 言えない時は抱きしめてあげる

「言わなきゃ分からないよ」ではなく、
「今、言えないんだね」と受け止めて:

  • 背中をさすってあげる
  • ギューっと抱っこしてあげる
  • 安心させながら泣かせてあげる

涙は心を癒す特効薬です。
 
3. 頑張っているところを見つけて褒める

「1秒でもいいから心を合わせて、ちゃんと褒めてあげる」
褒められることで自信がつき、大人の脳が活性化します。
そうすると「やっちゃいけないこと」を自分で止める力がついてきます。


 

私自身の体験談〜感情を癒すと言葉が溢れ出る〜


実は、わたし自身も、昔は同じような状態でした。

私もお姉ちゃんで、妹がいて、言いたいことが言葉にならない。何を言っていいか分からず、ただ涙が出てくる状態でした。
でも、感情を癒していくと変化が起きました。

溜まっていた感情が解放されると、自然と言葉が出てくるようになったのです。それも、人の心に響く言葉が。

今、こうして多くの親子をサポートできているのも、自分自身が感情の癒しを経験したからこそです。

子どもたちも同じです。心の傷が癒されれば、必ず言葉は出てきます。


 

夏休みの宿題で実践〜親子で取り組む心の回復〜


Sちゃんの夏休みの作文のテーマは「人との関わり」でした。

わたしからの提案:
「心の先生から心のことを勉強した、という内容で書いてみない?」
 
作文の構成例(400字詰め原稿用紙3枚分)

1: 夏休みに心の勉強をした。褒めてもらった。すごく嬉しかった。
2: 妹が邪魔してきて辛かった。先生に「いつも邪魔されて辛かったね」って言われたら、急に涙が出てきた。
3: 私の大切な鏡を妹に壊された時も、実はすごく悲しかったんだと気がついた。先生から「泣いていいよ」って言われて、心が治ることを知った。
4: ゲームがやめられないのも、傷ついた気持ちがあるからだと分かった。
5: 自分で泣いたりして感情を出せば癒される。そうすると、お母さんに注意されても素直に「分かった」と言えるようになるんだって。
6: これから少しずつ自分の気持ちを分かってあげよう。そうしたら、いい言葉が書けるし、ちゃんと話せるようになる。これからが楽しみ。
 
こうやって、「考える回路」を一緒につくっていく。
夏休みは、親と子、深くかかわれる貴重な時間なのです。


 

親がサポートすることの大切さ


わたし:
「3年生に3枚は難しすぎるのでは?どこから手を付けていいかわからなくて苦しんでいます。お母さん、一緒に考えてあげていいんですよ」

わたし自身、子どもの自由研究は、いつも一緒にやっていました。
高学年になったら、淋しいくらい、自分で全部できるようになったんです。

今は親が伴走する時期。一緒にやることで、子どもは自信を得られます。


 

感情の仕組みを理解することの大切さ

芋づる式に出てくる感情

わたし:「今、一個の出来事だけれど、それに似たような出来事が芋づる式に残っていて、それが一気に出てきているという感じです」
一つの出来事がきっかけで、過去の似たような悲しい体験が一気に蘇ってきます。だからこそ、子どもの反応が大きく見えることがあるのです。
 

上の子と下の子の特徴を分けて考える

わたし:「上の子の特徴と下の子の特徴を、それぞれ分けて、全然違いますから、それぞれの特徴を伸ばしてあげることができるんです」
第一子は第一子の、第二子は第二子の特徴があります。同じように育てようとせず、それぞれの個性を理解することが大切です。
 

実際に変化が起きる様子

セッション中、Sちゃんは何度も涙を流しました。
わたし:「溜まっていたものが出てきているのね。いっぱい泣いたらスッキリするからね」

涙は心のデトックス。
出し切ることで、本当にスッキリするのです。


 

ママへのメッセージ

完璧を求めなくていい

「お母さんの対応は、それで大丈夫ですよ」
わたしはお母さんの対応を否定しませんでした。完璧な親なんていません。大切なのは、気づいたら直していくことです。

自分を責めすぎないで

理不尽に怒ってしまった時は、素直に「ごめんね」と謝ればいいのです。完璧な対応はできなくても、愛情は必ず伝わります。

変化には時間がかかる

「だんだんと気持ちの切り替えができるようになってきますから、大丈夫です」
すぐに変化が見えなくても、心の奥では確実に癒しが進んでいます。

   

今日からできること

1. 子どもの話を最後まで聞く
忙しくても、子どもが何かを訴えてきた時は、まず手を止めて聞いてあげてください。


2. 頑張っているところを見つける
小さなことでも構いません。「今日は宿題を自分から始めたね」「妹に優しくしてくれたね」など。


3. 感情を受け止める
「悲しかったんだね」「悔しかったんだね」と、まず気持ちを受け止めてあげてください。


4. 完璧を手放す
夏休みの宿題も、親が手伝って構いません。今は「一緒にやる」ことで、子どもは安心感と自信を得られます。 

    

おわりに


子どもが「言うこと聞かない」時、そこには必ず理由があります。

  • 妹に邪魔された悲しみ
  • 理不尽に怒られた傷
  • 本当は認めてほしい気持ち

これらの感情が「もっと、もっと」という形で表現されているのです。



感情を癒すことで、子どもは自然と素直になります。
そして言葉も豊かになっていきます。

感情が癒されると、人の心に響く言葉が溢れるように出てきます。
子どもたちも同じです。心の傷が癒されれば、必ず素晴らしい言葉を話し、書けるようになります。



今、小学生のお子さんをお持ちのママ、まさに今がチャンスです。一緒に子どもの心に寄り添い、感情を癒していきませんか?
完璧な親である必要はありません。ただ、子どもの心に気づき、受け止めてあげるだけで十分です。



子どもの「言うこと聞かない」は、実は「分かってほしい」のサインなのです。

この記事が、同じように悩んでいるママたちの心に届き、親子の関係がより良いものになることを願っています。
 
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感情教育セラピスト|心理アーティスト 西谷真美
親と子の思春期講座
http://blue-winds.com

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