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感情を感じきることが、人生を変える―

2025/6/18 栃木での「愛と信頼と喪失の講座」より

 

心理セラピストの西谷真美です。
私はこれまで23年間、1万件を超えるセッションや講座を通じて、たくさんの方の人生と向き合ってきました。

今回の講演のテーマは「愛と信頼と喪失」。
これは単なる心理学の話ではありません。
“人が本当に癒されるとはどういうことか”
“なぜ、失った出来事が人生を止めてしまうのか”
“どうしたら、自分らしく生きられるようになるのか”
その本質に迫る、大切なお話です。

 

わたしがこの仕事にたどり着くまで

私が心理セラピストになったのは、何か特別な資格があったからでも、人助けをしたかったからでもありません。
ただ、自分がとにかく苦しかったからです。

30代の私は、病んでいました。
子育てに行き詰まり、パートナーシップもうまくいかず、義理の家族との関係もギクシャク。
体調も悪く、人間関係でも悩み、何をしてもうまくいかない。そんなオンパレードのような日々でした。

「このままじゃダメだ」と思って学び始めた心理の世界。
最初は自分を変えたくて、そして子どもたちにガミガミ言いたくなくて、学び、セッションを受ける中で、気がつけば今度は私が“提供する側”になっていました。

 

心が癒えていないと、人の心に触れられない

心理セラピストとして仕事をする中でも、たくさんのことがありました。
ビジネスの失敗、生徒からの怒り、パートナーに仕事を否定されることもありました。
けれど、それらをひとつずつ感情と向き合い、乗り越えてきたからこそ、今、赤ちゃんから大人まで、幅広い方の心に寄り添えるようになりました。

この仕事は、人の“深い感情”に触れる仕事です。
だからこそ、自分自身、まだ癒されてない部分があると、相手に本当に寄り添うことはできません。
私は、病んでいた自分を否定せずに向き合ってきたからこそ、今があります。

 

喪失と向き合えないまま生きている人たちへ

人生にはたくさんの「喪失」があります。
人との別れ、ペットの死、引っ越し、仕事の引退、子どもの自立、お金を失うこと…
女性は特に、60歳を過ぎる頃になると、さまざまなものを手放してきた感覚が強くなります。

けれど、その時にちゃんと“感情を感じきって”いないと、心の奥に未消化な感情が残り続けてしまいます。

それが後になって「漠然とした不安」「更年期症状」「体調不良」となって現れたりします。

 

小さな喪失も、心にはしっかり残る

喪失には大小がありますが、実は小さな喪失こそ、心に深く蓄積されやすいのです。

・お気に入りのぬいぐるみをなくした
・おしゃぶりを突然取り上げられた
・仲良しの友達を取られた
・大好きな担任の先生が異動した
・卒園、進学、引っ越し…

そうした小さな「失う体験」が、心のバケツに少しずつたまり続けていきます。

バケツの中の感情は、ずっとそこにあるわけではありません。
あるとき、人生の大きな喪失(離婚、死別、退職など)を経験したとき、一気に溢れ出すのです。

 

感情は「感じる」と消えていく

では、どうすればこの感情を溶かすことができるのでしょうか?

実はとてもシンプルです。
「今そう思ってるんだね、いてもいいよ」と、感情に“居場所”を与えるのです。

この一言で、否定されたり抑えられたりしてきた感情たちは、「やっとわかってくれた」と静かになっていきます。

逆に「こんな風に思っちゃダメ」「なんでこんな気持ちになるの?」と自分を責めると、感情は逆に強化され、出口を失って暴走します。

60歳以降になると、それがぎっくり腰、骨折、車の事故など「強制ストップ」のような形で現れることも多いのです。

 

喪失の感情には「5つの段階」がある

喪失を受け入れるには、感情のプロセスを正しくたどる必要があります。

  1. 否認:「そんなはずない」
  2. 怒り:「なんでこんなことに」
  3. 罪悪感:「もっとこうしていれば…」
  4. 抑うつ:「何もしたくない」
  5. 受容:「ありがとう、もう大丈夫」

多くの人が、このプロセスの、2~4で止まってしまいます。
「怒っちゃいけない」「泣いちゃいけない」「終わったことは忘れなきゃ」
それが、感情の“未完了”を引き起こすのです。

 

原因は、もっと深いところにある

では、なぜ人によって喪失体験が繰り返されるのか?
人生のどこで「喪失」に過剰反応するようになるのか?

それには、ある“原点”があります。

それは、私たちが「子宮の中」から「この世界に生まれた瞬間」です。

温かくて安全な子宮の中から、産道を通り、生まれ出たその瞬間。
それは、人生で最初の「喪失」です。

この時の体験――
・冷たいベッドに置かれた
・すぐに抱っこしてもらえなかった
・保育器に入れられて会えなかった
・無意識に「見捨てられた」と感じた

それが“人生における喪失パターン”をつくり出すのです。

 

子宮の記憶がつくる人生パターン

私は、出産や出生の体験と、その人の人生のパターンをずっと研究してきました。

・帝王切開だった人に共通する心のパターン
・自宅出産だった人が抱える人間関係の特徴
・母子分離を早くに体験した人が抱える喪失感…

すべてに“繋がり”があるのです。

出産トラウマ(バーストラウマ)を癒すと、
・急に就職先が決まる
・人との関係性が改善する
・体調不良が回復する
など、驚くような変化が起こります。

 

罪悪感もまた、感情のひとつ

喪失に伴う感情の中でも、特に重く、長引くのが「罪悪感」です。

・もっと優しくしてあげればよかった
・ガミガミ言ってしまった
・ちゃんと看取れなかった

罪悪感を抱えたままだと、人は自分を許すことができません。
それが体調不良や事故、お金の損失という形で“自分を罰する”人生をつくってしまいます。

私も、子どもにガミガミ言っていた時代がありました。
爪をかみ、甘皮をむしる癖もありました。
それらすべてが、自分の「心の傷」から来ていたと後で気づきました。

 

感情を感じることが、生き方を変える

今の私は、昔のように感情を溜め込むことがありません。
感じて、溶かして、手放す。
その繰り返しで、心が軽くなり、体調も良くなり、生き方そのものが変わっていきました。

これは私だけではありません。
80代になってからも、喪失の感情を癒して、自分の作品がInstagramで大人気になった方もいます。
自分のペースで、自分の心と向き合えば、何歳からでも変われるのです。

 

喪失の奥には、愛がある

「私は夫に愛されていたんだろうか」
そう語る高齢の女性は少なくありません。

けれど、ふとしたときに
・整えられた家の中
・生活に困らない年金
・残された資産・財産や習慣
そんな“目に見えない愛”に気づく瞬間があります。

それが、心が成熟した時に見えてくる「大人の愛」です。

喪失の感情を感じきることで、
私たちは「悲しみ」から「感謝」へと、心のステージを移動させることができます。

「大人の心」で、残してくれた豊かさや愛に気づき、失った悲しみの涙ではなく、今度は感謝の涙が流れるのです。

 

あなたの失ったものは、何を教えてくれた?

過去に失ったもの
感じきれなかった悲しみ
繰り返してしまった別れ
そのすべてが、あなたに何かを教えようとしていたのかもしれません。

感情を無視せず、向き合うことで、人生のパターンは変わっていきます。

あなたの人生は、ここからもっと自由に、もっとやさしく、もっとあたたかくなる。

 

「愛されていた」
「守られていた」
「失ったけど、得たものもある」

 

そう気づいたとき、
あなたは“本当の意味で”立ち上がることができるのです。

 

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