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50代60代の「泥沼恋愛」

「心の仕組み」から読み解く大人の恋
はじめに
年齢を重ねてからの恋愛には、若い頃とはまた違う複雑な心の動きがあります。特に50代・60代になると、子どもの頃に満たされなかった気持ちが、まるでスクリーンに映し出されるように恋愛相手に「投影」されて、つらい泥沼の恋愛になってしまうことがあります。
この年代ならではの恋愛パターンを分かりやすく解説していきます。
ケーススタディ:なぜかうまくいかない恋愛の裏側
こんなお悩みありませんか?
50代後半のAさんは、恋愛で本当に苦しい思いをしていました。「消えてしまいたいほど苦しい」「この苦しみから解放されたい」と話すほど、激しい感情に襲われていたそうです。
わかったのは、Aさんが相手に抱いていた激しい感情が、実は「まるで赤ちゃんの頃のお母さんへの気持ちを相手にぶつけているようなもの」だったということです。
「投影」ってどういうこと?心の動きを3つの段階で見てみよう
「投影」は、まるで自分の心の中にあるものを相手に映し出すような現象です。ここでは、その心の動きを3つのステップで見てみましょう。
ステップ1: 相手を「理想の人」だと感じる
- 相手が「かわいくて仕方がない」「いとおしくてたまらない」と感じます。
- 相手が頑張ったり成長したりする姿を見ると、心から応援したくなります。
- まるで赤ちゃんが一生懸命歩こうとするのを、親が見守るような温かい気持ちになります。
ステップ2: もっと「ちょうだい!」と求める気持ちが強くなる
- 相手に対して「もっともっと」という欲求が止まらなくなります。
- 相手が自分の思い通りにならないと、激しい怒りがこみ上げてきます。
- 「なんで思い通りにならないんだ」「あなたは私の言いなりのはずだ」といった、子どもの頃の強い不満が顔を出します。
- 忘れられない、頭の中に「相手」が常に「住んでいる」状態になります。
- もう別れた方がいい!とわかっていても、執着が邪魔をし、会いたくなります。
ステップ3: 絶望して、子どもっぽい自分に戻ってしまう
- 関係がうまくいかなくなると、「お母さんのお腹の中に帰りたい」といった、赤ちゃん返りのような気持ちが強くなります。
- 「消えてしまいたい」「楽になりたい」という言葉が出ることもありますが、これは実際には「母親に受け入れてもらいたい」「子宮の状態に戻りたい」という心の叫びです。
- 現実から逃げたくなったり、お酒や食べ物、特定の人に過度に頼ったりする行動が増えます。
なぜ50代・60代でこのようなことが起こるの?
人生の変化期に心が不安定になるから
定年退職、体の不調、子供の巣立ち、親の介護など、50代・60代は人生の大きな節目を迎えることが多い時期。第二の思春期とも言えます。こうした変化の中で、心が不安定になり、まるで幼児期に戻ったように「誰かに無条件に愛されたい」「甘えたい」という気持ちが強くなることがあります。これまでは「しっかりした大人」として頑張ってきたけれど、もう疲れてしまった、と感じる人もいるでしょう。
子どもの頃の「満たされない思い」が影響しているから
幼い頃に、親からの愛情が十分に感じられなかったり、甘えたい気持ちが受け止めてもらえなかったりした経験があると、その「満たされない思い」が大人になってからの恋愛で噴き出すことがあります。パートナーに、まるで母親のような役割を求めてしまうことがあるのです。また、バーストラウマ(出産時のトラウマ)が表出し、「もう二度と会えないかも」「ひとりになるのが怖い」と、しがみつきたいくらいの恐怖心が出てくることもあります。
お互いが「赤ちゃん」になってしまう
お互いが相手に「子どもの頃の自分」を映し出して依存してしまうと、まるで「赤ちゃん同士の恋愛」状態になってしまいます。こうなると、現実的な問題を冷静に話し合ったり解決したりすることがとても難しくなってしまいます。体は大人、でも、言ってることは大人ぽく聞こえますが内容は、まるで「赤ちゃん」です。
こんな行動にもつながるかもしれません
- お酒や食べ物への依存:「もっとおっぱいを飲みたかった」という幼い頃の満たされない欲求が、別の形で現れることがあります。
- 極端な感情表現:激しい怒りや破壊的な衝動を抱くことがあります。
- 相手をコントロールしようとする行動:自分の思い通りにならないことへの強いイライラから、相手を支配しようとすることがあります。
苦しみから抜け出して、前向きな関係を築くには?
自分の気持ちを言葉にしてみる
心の中にある原初的な怒りや不満を、まずは言葉にして表現してみましょう。それは今の自分自身の感情ではなく、「心の中にいる子どもの自分(内なる赤ちゃん)」の声なんだ、と理解することが大切です。
また、「もっともっと、かまって、私だけ見て」、という気持ちも言葉にしてみましょう。ものすごい寂しさと、怒りと、不安と、「取られる!」という思いが湧き上がってくるかもしれません。
「投影」に気づく
相手に求めているものが、実は、母親に対する、自分の幼い頃の気持ちを映し出した「投影」だと理解することが、回復への第一歩です。相手を変えようとするのではなく、自分の心の中にある「満たされない気持ち」と向き合い、癒し、躾け、育てるワークを行うことが改善への道となります。
少しずつ自立を目指す
相手に依存しがちな関係から、少しずつ距離をとり、成熟した大人同士の関係を築く練習をしてみましょう。言葉で言うのは簡単ですが、ものすごい「赤ちゃんごころ」が邪魔をしてきますので、専門家に伴走してもらいながら、向き合うことをお勧めします。
幼少期の経験が大人になってからの恋愛にどう影響する?
子どもの頃に、適切な愛情を受け、適切に自立していく経験はとても大切です。
また、バーストラウマの癒しについての知識を知ることで、この感情は「今」じゃないんだ、ということがわかり、少し客観的にみることができるでしょう。
- 授乳の時期:授乳が長すぎると、いつまでも誰かに頼ってしまう傾向につながることがあります。
- しつけ:我慢することを学ぶ機会は、将来の自立に必要です。
- 感情の受け止め方:子どもが泣くことを適切に受け止めつつも、何でもかんでも要求を満たさないことも大切です。
もしこれらの経験が不足していると、大人になってからの恋愛でつまずいてしまう可能性が高くなります。
なので私は、「チャイルドセラピー」に力を入れています。
まとめ
50代・60代の恋愛で感じるつらい気持ちの多くは、子どもの頃に満たされなかった気持ちや母子分離不安が「投影」として現れています。このことを知ることで、自分の感情を客観的に見つめ、もっと心穏やかな関係を築けるようになるでしょう。
また、この問題は、時にはDVやストーカー行為といった深刻な社会問題につながることもあります。社会全体で、このような心の動きについて理解を深めることが大切です。
大切なのは、これらの感情は決して「恥ずかしいもの」ではなく、人が成長する過程で誰にでも起こりうる自然な心の動きとして捉え、個人セッションや講座などで、サポートを受けながら向き合っていくことをお勧めします。