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ママが自分を責めてしまうとき

「叱る」と「怒る」の違いと、未熟さを育てる視点
子育てでいちばんしんどいのは、子どもにイライラすること、そのものではなく、そのあとにやってくる 「自分責め」 ではないでしょうか。
「つい怒鳴ってしまった…」
「言いすぎて傷つけてしまったかも」
「甘やかしてしまった、私がちゃんとしなきゃ」
寝顔を見ながら反省して、涙が出る。
「私なんて母親失格だ」と落ち込む。
でも実は、この”自分責め”をちょっと違う角度から見ることで、親子関係が劇的に変わることがあります。
自分責めの2種類を知ることから始めよう
この自分責めには、実は 2つの種類 があります。これを区別することが、ママが楽になる第一歩です。
1.本当に直すべき行動からの自分責め
たとえば、
- 子どもに感情的に怒鳴ってしまった
- 無視してしまった
- きょうだいで差をつけてしまった
- 体裁を気にして、人前で子どもを下げる発言をしてしまった
これらは「私が悪かった」と気づくことで改善に向かえる 成長のサイン です。反省は、次への灯り。「次はこうしてみよう」と行動を変えるためのきっかけになります。
2.心の傷からくる自分責め
もうひとつは、子どもの言葉や態度が ママ自身の古い傷 に触れたときに出てくる自分責めです。
「ママなんか嫌い!」と言われた瞬間、胸がチクッとして「やっぱり私が悪いのかな…」と落ち込む。
でも実際は、子どもが自分の気持ちをそのまま表現しているだけ。それがママ自身の「昔の傷」に重なって、必要以上に自分を責めてしまうのです。
この2つを区別できないと、ママの心はどんどん疲れていきます。
なぜ自分責めが起こるのか?
──ママの中のインナーチャイルド
子育てをしていると、ママの中の「子どもの心(インナーチャイルド)」が頻繁に顔を出します。
- 子どもに泣かれると、責められているように感じて辛い
- 「見て見て、構って構って」と要求されると気持ち悪い
- 家事育児をして当たり前だと思われているように感じる
- 本音は「子どもより私の方を世話してほしい」
これらはすべて、ママの中にいるインナーチャイルドの声なんです。
ママの大人の心では、子どものことをちゃんと愛しています。子どもを愛せなくなったり、受け入れられなくなるのは、ママの深い心の中にいるインナーチャイルドが反応しているからなのです。
「叱る」と「怒る」の決定的な違い
ここで大切なのは、「叱る」と「怒る」は根本的に違うということです。
怒る:感情が爆発すること
- ママの心が処理しきれずに出るもの
- 感情的で、一方的
- 子どもには「攻撃」として伝わってしまう
叱る:子どもを成長させたいからこそ伝える行為
- 愛情に基づいた指導
- 子どもの将来を思っての行動
- 「これはダメなんだよ」をきちんと教える
そして、叱るには、子どもとの関係に「甘え」が保障されていることが必要です。
甘えるメリット──なぜ甘えが大切なのか
「甘える=ワガママ」と思っていませんか?
実は甘えには、親子関係において大きなメリットがあります。
甘えが子どもに与えるもの
- 安心の土台:「ママに受け止めてもらえる」という確信
- 叱られ力:叱られても「ぼくの成長のため」と受け取れる力
- 心の回復力:傷ついても「大丈夫」と立ち直れる強さ
「ママに甘えても大丈夫」「嫌われない」という土台があるからこそ、子どもは叱られても折れません。
逆に、甘えが足りないときに叱ると、ただの”攻撃”として伝わってしまいます。これでは、子どもの心に恨みや傷が残ってしまうのです。
叱れないママの心理──その奥にある気持ち
「叱らなきゃいけないのに叱れない」という悩みもよく聞きます。その裏には、こんな心理が隠れています。
- 子どもに嫌われたくない
- 自分の育てられ方と比べて「同じことを繰り返したくない」
- 過去の自分の傷が疼いて、声を出せなくなる
- 体裁を気にして、人前で厳しくできない
叱れない自分を責める必要はありません。まずは「なぜ私は叱れないのか」を知ることがスタートです。
そして、叱るときに大切なのは
- 何がダメで叱っているのかをわかるように説明する
- 罰で子どもの大切にしているもの(楽しみにしているもの)を奪わない
- 叱った後に「でも大好きだよ」と伝える
体裁からの怒りを手放す
ママが怒ってしまう原因の多くに「体裁」があります。
よくある体裁からの怒り
- 子どもが挨拶できないと恥ずかしい
- みんなと同じようにできないと恥ずかしい
- 公共の場で騒いで迷惑をかけて恥ずかしい
でも、子どもは未熟で幼い存在です。幼稚園児に「大学生になれ!」と要求しているようなもの。
人前でつい言ってしまう ↓
- 「うちの子はこれができなくて…」
- 「ほら、挨拶は?」
- 「ありがとうは?」
- 「貸してあげなさい」
実は、これらの言葉は子どもをとても傷つけます。「そんなに自分はダメなの?」と思ってしまうのです。
未熟なもの同士であるという視点
子どもは未熟です。でも実は、親の中にも「未熟な部分」が残っています。
だからこそ、ぶつかる。だからこそ、傷つけ合う。
けれど、それは「失敗」ではなく、親子で成長していくためのプロセスなのです。
誰もが未熟からスタート
- 初めてお母さんになる時、未熟です
- 初めて幼稚園に入った時も、未熟です
- 初めて小学校に入る時も同様に、未熟な状態からスタートします
人は誰でも、たくさん失敗して、間違えて、ストレスと向き合い、時に痛い思いをしながら、少しずつ成長していくものです。
未熟さを認め合うことで、親子の関係はぐっとラクになります。
心を成長させる3つのステップ
マザーマインドプログラムでは、心を成長させるステップとして3つが示されています。これは、子どもにも、ママ自身の子ども心にも当てはまります。
https://blue-winds.com/mothermind
ステップ1:寄り添い・全肯定
- どんな気持ちや感情も寄り添って、全部肯定する
- 今すぐ変えられないので、ただただ「そう思うんだね、そうなんだね」と受け止める
ステップ2:しつけ
- 「こういうことなんだよ」「こういう依存はダメなんだよ」と、ルールを教える
- 子どもの心は、まだルールを知らないので教えていく
ステップ3:教育
- なぜそれをしてはダメなのか、なぜそれをしなければいけないのかを教える
- 知らないことを、丁寧に伝えていく
子どもの心の育て方と実際の子どもの育て方は、実は全く同じなのです。
自分責めを「成長のサイン」に変える実践法
自分責めを感じたとき、こう問いかけてみてください。
1. これは「行動を改善すればいい自分責め」?それとも「心の傷からきている自分責め」?
行動改善系なら:次の一手を考えましょう。
- 感情的に怒ってしまった → 落ち着いてから話す時間を作る
- 体裁で怒ってしまった → 子どもに謝って、気持ちを伝える
心の傷系なら:深呼吸して「これは昔の私の傷だ」と切り分けましょう。
2. 感情を感じて、認める
「イライラしてもいい」
「子どもが可愛く思えない時があってもいい」
「完璧じゃない私でもいい」
抑え込まずに、まずは感じることから始めます。
3. 子どもの気持ちにも寄り添う
①子どもには愛がある(ママを助けたいと思っている)
②説明すればわかる(どんな小さい子でも、言葉で説明すれば理解できる)③子どもの見ている世界がある(大人とは違う世界を見ている)
今日からできる一歩
1. 甘えを受け止める練習
- 甘えられたら「よしよし」と5秒でいいから受け止める
- 「甘えていいよ」と言葉で伝える
2. 叱った後のフォロー
- 「怒ったけど、あなたのことは大好きだよ」と伝える
- 感情が収まった後で、なぜ叱ったのかを説明する
3. 自分責めが来たら
- 「これは成長のサイン」とつぶやく
- 2種類のどちらかを見分ける
- 必要なら子どもに謝る(親も間違える、親も謝る)
4. 体裁の怒りに気づく
- 人前で子どもを下げる発言をやめる
- 「恥ずかしい」という感情に気づく
- 子どもは未熟で当たり前だと思い出す
まとめ──親子は一緒に育っていく
- 自分責めには2種類ある:改善のサインか、古い傷の疼きか
- 「叱る」と「怒る」は違う:叱るには甘えの土台が必要
- 甘えがあるからこそ叱れる:安心の土台が叱られ力を育てる
- 親子は未熟なもの同士:だからこそ一緒に育ち合える
- 体裁の怒りを手放す:子どもは未熟で当たり前
子育ては、ママが自分を責める旅ではなく、ママも子どもも「いっしょに未熟さを育てていく旅」。
今日も自分を責めそうになったら、ちょっと立ち止まって、「これはどちらの自分責め?」と問いかけてみてください。
その瞬間から、親子の関係は新しい一歩を踏み出します。
心の深いところに潜在している子ども心。記憶にない子どもの頃のお母さんに対する思いが、子育てを通して様々な形となって現れます。でも、それに気づけたら、癒して、しつけて、教育していくことができる。
ママ自身の子ども心の育て方と、実際の子どもの育て方は、全く同じなのです。
これだけでも親子関係は大きく変わります。
あなたも子どもも、未熟さを通して一緒に成長していけるのですから。