記事の詳細

「子どもに自由にさせてあげたいんです」
「厳しくしたら嫌われちゃう」
「甘やかしと躾けの境界線がわからなくて」

ママたちから時々、そんな声を聞きます。

私も子供たちが小さい時、どんな時にダメを言って、どんな時に寄り添えばいいのかわかりませんでした。

子育ては、誰も教えてくれない中で手探りで進めていくもの。でも、その中で一つだけ確信を持って言えることがあります。それは「愛ある躾け」が、子どもの人生だけでなく、私たち自身の人生も変えていくということです。

今日は、そんな「躾け」の本質について、私の体験を交えながらお話しします。

 

—–
誰も教えてくれなかった「母親業」
—–

学校でお母さんになる教育を受けたことはありません。
社会に出て自立するため、もっと色々できるようになるための教育ばかりでした。

子供を産んだらすぐ「おかあさん」。
まるで、車の教習所に行かずにいきなり路上で運転するようなものです。

育て方、躾け方は、自分の親や周りの人、大量にある育児本から選んで学ぶしかありません。でもそれが本当に正しいかの証拠はどこにもない。本当に手探り状態での子育てです。

これで合ってるのか間違ってるのか。ある人は、それでいいと言い、ある人は、それではだめだと言う。迷いながら混乱しながら、そしてママ自身のインナーチャイルド、感情が刺激されまくりの苦しい中での子育てです。

私たちの親も、そんな状態で苦悩しながら私たちを育ててきたのでしょうね。私たちが大人になって苦しいのは親がちゃんと育ててくれなかったからだと恨み、距離を置き、そんな自分に罪悪感を感じるから、なのかもしれません。

でも、親もやり方を知らなかったし、今のような情報もない中での子育てだったと想像すると、苦しみを理解できるのではないでしょうか。

 

—–
消えない子育ての罪悪感
—–

子育ての罪悪感は、ずっと持ち続けます。特に、子供が思春期になってから、巣立ってから、大きく膨れ上がって心身に影響を与え続けます。

あの時、こんなことをしてしまった。
あの時、こうしてあげればよかった。
あの時、もっと甘えさせればよかった。
あの時、傷つけてしまった。
あの時、もっと話を否定せず聞いてあげればよかった。
あの時、もっと一緒にいてあげればよかった。
あの時、守ってあげればよかった。
あの時、あの時、あの時……

苦し過ぎて、もう思い出したくないくらい、たくさんの罪悪感が心に溜まっています。

どんなに「あの時は未熟だった。だからしょうがない」「あの時はそれしかできなかった」と言われても、そうそう消えるものではありません。

この罪悪感が40代後半から更年期的症状となったり、眠れない、漠然とした不安と心配性となり、自分の人生を生きる邪魔をします。また、この罪悪感から、人をしっかり育て躾けることができず、つい「可哀想」と思い、甘やかし過ぎてしまいます。

でも、大丈夫です。今、ここから「本当の躾けとは何か」を学び直すことができます。そして、子どもへの躾けは、実は自分自身の内側にいる子供ごころを育て直すことでもあるのです。

 

—–
躾けとは「ガミガミ叱ること」ではない
—–

「躾け」と聞くと、多くの人が「ガミガミ叱ること」をイメージします。だから、躾けに対して抵抗感や罪悪感を持ってしまうのも無理はありません。

でも、本当の躾けとは、手取り足取り、伴走しながら教えてあげることです。

「知らなかったよね」と認めながら、「こうするんだよ」と丁寧に伝えること。怒鳴るのではなく、未来を信じて共に歩むこと。それが躾けの本質です。

そして、この「愛ある躾け」は、子どもの人生に安心と自信を育み、やがて社会全体にも良い影響を与えていくのです。

 

—–
なぜ「躾け」が必要なのか
—–

躾けが育っていない内側の子供ごころは、世界を「怖い」と感じやすくなります。

世界は安全じゃない。何か悪いことが起きるのでは。自分は守られていない。誰も助けてくれないのでは。

根拠のない不安に振り回され、常に「世界は危険だ」と怯える心になりがちです。なぜなら、まだ育ちきっていない子供ごころは「自分で考えて動く力」が十分に育っていないからです。

不安が起きるとすぐに
「誰かに助けてほしい」
「私は悪くない」
「どうして誰も守ってくれないの」と感じ、実際に行動できなくなってしまうのです。

でも、これは「ダメな自分」ではありません。ただ、「まだ育てられていない部分がある」というだけなのです。

 

—–
躾けを避けてしまう本当の理由
—–

「子どもに自由を与えたい」
「厳しくすると嫌われるから……」

そう思って、躾けを避けてしまうこと、ありますよね。私もそうでした。

でもそれは、自分自身が子どもの頃に親の言うことを聞かず、否定されて反発していた経験が隠れていることが多いのです。

躾けとは、子供と真剣に向き合うとても大切な時間。でも同時に、自分の感情が強く刺激される時間でもあります。

だから、「面倒くさい」「イヤだ」と感じて避けてしまったり、塾、習い事などに「外注」してしまったりする。これは「悪い親」だからではなく、私たち自身も同じように本気で躾けられる経験が少なかったから、なのです。

 

—–
私自身の体験──ゲームを1年間取り上げた話
—–

2014年、私の三男が小学校4年生のとき、1年間ゲームを取り上げたことがありました。

最初はもちろん大反発。怒り、泣き、しまいには放心状態の抜け殻。本当にこれでよかったのかと迷いました。正直、心が折れそうにもなりました。

でも私は「間違いだったとしても、これでいく」と決め、貫き通しました。

結果どうなったか。息子の中に「自分でコントロールする力」が育ったのです。

小4から20代になった彼の今までを見ていても、「子供ごころはちゃんと躾けられている」とはっきり感じます。

あれから11年経ちましたが、あの1年間は息子の人生にとって、そして母としての私にとっても、かけがえのない時間でした。あの時、逃げずに向き合って本当によかったと思っています。

 

—–
「本当の躾け」とは何か
—–

幼少期に「ダメ」を優しく、しっかりと向き合ってもらえなかった子供ごころは、大人になってからも以下のようなパターンを繰り返しがちです。

自分との約束を守りにくい。やりたくないことから逃げる。好きなことだけしていいと思ってる。時間やお金にルーズ。感情をコントロールできない。

だからこそ、躾けとは「ガミガミ叱る」ことではなく、一緒に繰り返し練習すること。この手間を惜しまずに向き合えるかどうかで、その子の人生の基盤が決まります。

そして、これは子どもだけでなく、私たち大人自身の内側の子供ごころにも同じことが言えるのです。

 

—–
躾けが育つと、社会も変わる
—–

躾けが育っていくと、以下のようなことが起こり始めます。

ルールを自然に守れるようになる。「お互いさま」の気持ちが育つ。責任を持って行動できるようになる。感情を上手にコントロールできるようになる。コツコツ継続できる力が養われる。

危機に直面しても「自分にできることをやろう」と動ける。お互いを支え合える。

結果として、一人ひとりの小さな変化が社会全体を強くしていくのです。すべては「今日、自分にできる小さな一歩」から始まります。

 

—–
躾けの3つの基本ルール
—–

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。基本は、この3つです。

1. 人の話をしっかり聞く
2. 決められたルールを守る
3. やりたくないことも「やる」と決めてやる

この3つを、毎日コツコツ教えていく。それが躾けです。

すると、自分が決めたことに対して責任を取れるようになります。「自分との約束を守れる」のです。そして「人との約束も守れる」ようになり、信頼されるようになります。

親は「自分で考えて動きなさい」ではなく、
「こうやって、こうやって、こうするんだよ」
「なぜなら……」
とマニュアルのように具体的に伝えることが大切です。

洗濯物、畳んだらここに入れてね。
お風呂から上がったらすぐ体を拭いて服を着なさい。
公園からは「あと5分」ではなく「時間だから帰るよ」と伝える。

こうした具体的な積み重ねが、人生の土台をつくります。

子どもにも、自分自身の内側の子供ごころにも、同じように具体的に伝えていくのです。

 

—–
「甘やかし」と「優しさ」の違い
—–

あるお母さんは、息子さんが学校に行き渋ったとき「嫌がられるのがイヤ」で休ませてしまいました。スマホやゲームの制限も「面倒だから」と先延ばしに。

数年後、結果として、息子さんはやるべきことができなくなってしまいました。

これは実は「大人自身が自分を甘やかしてきた」裏返しです。「私は小さいんだから多めに見て」「私なりに頑張ってるんだから許して」。そうやって生きてきた心は、相手にも同じ態度を取らせてしまいます。

また、生まれながらに体が弱い子、何かトラウマになるような出来事に巻き込まれた子に対して、親は罪悪感と「可哀想」という思いから、なかなか本気で躾けることができない場合があります。

すると子供は、その「病気」や「つらい出来事」を無意識に握り締めながら、そこを逃げ道にしてしまうことがあるのです。

甘やかしは、一見優しく見えますが、実は「向き合うことから逃げている」状態。本当の優しさは「大変だけど、一緒にやろう」「できるよ、信じてるよ」と、未来を信じて伴走することなのです。

 

—–
「ダメ」を伝える勇気
—–

子どもがやってはいけないことをしようとした時、優しく、でもしっかりと「これはダメ」と伝える。子どもが「えー!」とにらんでも、愛情を持って境界線を守る。

これは、子どもの安全と未来を守る大切な行為です。犬のトレーナーが、犬の幸せのために毅然と対応するのと同じです。

大人同士の関係でも同じ。年上でも立場が上でも、ダメなことはダメと伝える必要があります。

「嫌な顔をされるのがイヤ」で言えないのは、自分の中の子供ごころがまだ育ちきっていないサイン。でも、大丈夫。今から一歩ずつ、育てていけばいいのです。

 

—–
2
歳前後の躾けが未来を決める
—–

特に大切なのが2歳前後。

ある2歳児は、どこに行くにも、行く途中で必ず寄り道ばかりしていました。お母さんは、「この子は自由が好きだから、自由にさせてあげたい」と思っていました。

けれど本当は、「子どもの感情に向き合うのが怖い」から、自由にさせていたのです。

子どもは本当は「ママにしっかり向き合ってほしい」のに、向き合ってもらえないから「反抗」で寄り道していました。

この時期にしっかり向き合えば、親子の絆を深めることができます。逆にここを逃すと、「ママは本気で向き合ってくれなかった」という寂しさが心に残ってしまいます。

実はこの「寂しさ」は、一緒にいてくれなかったこと、遊んでくれなかったこと、より、もっと深い「寂しさ」なのです。

その寂しさはやがて、人との関係や社会との距離にも表れ、実家だけでなく”どこにも居場所がない”と感じてしまうことがあるのです。

でも、もし過去に向き合えなかったとしても遅くはありません。今日から意識してみる。自分の心をしっかり観察する。できることがちゃんとあるので大丈夫です。

 

—–
躾けが育つと人生はスムーズになる
—–

内なる子供ごころに躾けが育っていくと、以下のような変化が起こります。

素直に言うことを聞けるようになる。欲しいものが手に入りやすくなる。周りの人に応援される。幸せを感じやすくなる。人生が思い通りに進みやすくなる。

まるで信号が青になり続けるように、物事の流れが軽やかになります。それは「偶然」ではなく、躾けによって大人ごころが育った結果なのです。

 

—–
本物の自由とは
—–

「親に反抗して得た自由」は、一時的な解放感にすぎません。

本物の自由は、人の話を聞ける、ルールを守れる、やりたくないこともやると決めてできる、この先にあります。

ここを越えて初めて、自分で人生を切り開ける「大人ごころ」の自由が手に入るのです。そして、その自由は誰かに奪われることのない、本当の自由なのです。

 

—–
最後に
—–

躾けは「面倒でイヤ」なものに見えても、実は人生を形づくる大切な時間です。

子どもへの躾けは、自分の中の子供ごころへの躾けでもあります。甘やかさず、逃げず、真剣に向き合うこと。その積み重ねが大人ごころを育て、一人ひとりの人生を変え、やがて社会全体も変えていきます。

完璧である必要はありません。今日から、できることをひとつずつやっていけばいいのです。

「愛ある躾け」を自分に実践することは、あなたの人生を変え、やがて周りの人たちにも良い影響を与える最初の一歩となります。

一緒に、少しずつ歩んでいきましょう。

 

—–

正直に言うと、この文章を書くとき、私自身も葛藤しました。
厳しい言葉は、時に誰かを傷つけてしまうかもしれない。今回は何十回も書き直しました。

それでも勇気を出して書くのは、心から「あなたに届いてほしい」と願っているからです。私も同じように迷いながら進んでいます。

「躾けが大事」と頭ではわかっていても、実際にはなかなかできないことがあります。「厳しくすると嫌われるのでは」「どう伝えたらいいかわからない」。そんな葛藤に、私自身も何度もつまずいてきました。

イライラして強く当たってしまったり、逆に避けてしまって「まあいいか」と流してしまったり。失敗は数えきれないほどあります。

でも、チャイルドセラピーを通して、自分の感情、特に「原初の怒りや心の傷」を癒し、そしてたくさんの親子を癒し心を繋げてきたことで、私は20年以上という時間をかけてきました。

その長い積み重ねがあったからこそ、今は子どもたちが才能や能力を発揮し、「わたし」自身も人生を楽しみ、望む人生を自分でつくれるようになっています。

私の20年以上の経験をあなたに届けることで、きっとあなたは、もっと短い時間で同じように”形”を育てていけるはずです。

だから大丈夫。今日からの小さな一歩でいいのです。

「よくやったね」と自分に声をかけながら、一緒に進んでいきましょう。

関連記事

ページ上部へ戻る